杵臼からのメッセージ

 アイヌ遺骨返還訴訟の和解にもとづき、去る7月17日、北海道大学に長らく持ち去られていた12体の遺骨が、「コタンの会」の手によって、浦河町杵臼共同墓地に戻されました。地元のみならず、各地からの大勢の参列者がどれほど心安らいだことでしょう。杵臼コタンのシンリッ・エカシ・フチ(祖先の方々)も、同胞の80数年ぶりの帰郷をさぞ喜んでくださったと思います。「先住民族の権利に関する国際連合宣言」(2007年採択、UNDRIP)に列挙された「集団としての権限」の一端を、原告や「コタンの会」は史上初めて取り返しました。

 

 ところが北海道大学は、ほかの地域からの収集遺骨については、被害コタンからの請求がない限り、すべてを「象徴空間」に送る方針を変えません。他大学・博物館も同様のようです。

 

 かつて大学研究者たちが収集したアイヌの遺骨は、「象徴空間」などに再集約するのではなく、それぞれ元のアイヌコタンの墓地にこそ返還すべきです。

 

 かつて、一方的に発掘し、持ち去った過去の歴史を解明することなく、大学や研究者、政府の責任のありかを検証せず、謝罪もないまま、遺骨を一方的に集約し、再び研究対象とすることは、UNDRIPに反し、「アイヌ民族を先住民族とすることを求める決議」(2008年国会決議)を空文化する、著しく人道から逸脱した暴挙と言わねばなりません。

 

 以上をふまえ、私たちは次のメッセージを発信します。

 

(1)政府は、「象徴空間」への遺骨集約を中止し、収集遺骨を早急に元のコタンに返還する手立てを講じましょう。「杵臼」をモデルに各地アイヌ集団(コタン)への遺骨・副葬品完全返還のプログラムを確立しましょう。近代以後のアイヌ政策を反省し、アイヌに謝罪し、コタン復興を支援しましょう。

 

(2)アイヌ遺骨を収蔵する大学、研究機関、博物館などは、遺骨収蔵の経緯を検証し、その結果を公表し、自らの責任を認めて、アイヌへの加害を謝罪しましょう。コタンへの遺骨の返還に誠実に取り組みましょう。


(3)墓地発掘・遺骨持ち去りを受けた各地のアイヌ協会は、返還遺骨の受け入れとイチャルパ/シンヌラッパ(祖先の追悼)に向けた活動に取り組みましょう。また各自治体は地元の被害について調査・公表し、遺骨受け入れ活動を支援しましょう。

 

(4)市民は、アイヌに対する植民地支配・同化政策について学び合い、地元への遺骨返還を支援しましょう。

 

2016年11月25日 「歴史的な再埋葬を語る集い」参加者一同